手指と物では消毒法を変えたほうがいい?
新型コロナウイルス感染拡大に伴い、政府は非常事態宣言の対象地域を全国へと広げました。医療崩壊等の危険性は緊迫度を増している様相です。
前回は神戸大学・辻野義雄教授より手指のアルコール消毒の適切な濃度についてお話を伺いました。
こちらの記事の内容に誤りがございました。ここに訂正しお詫び申し上げます。
- 誤:
- 「消毒に適した濃度は、30~50%」
- 正:
- 「消毒に適した濃度は、40~80%」
※2020年4月21日に記事内容を修正させて頂きました。
アルコールやエタノールなどの消毒液の濃度は40~80%が効果的であることや、他タイプの消毒液の有効性について掲載しました。
先日、辻野教授からアルコールやエタノールの消毒に関する追加情報を頂きました。
微生物に対するエタノールの作用メカニズム
エタノール濃度 | 主なメカニズム | 死滅時間 |
---|---|---|
1~8% | 細胞内外のH+イオン濃度勾配、トランスポート系酵素阻害、 ATP、RNAの合成阻害 |
静菌作用 |
8~20% | 細胞膜が傷つき菌体内成分が漏出、 トランスポート系酵素阻害などで菌が餓死 |
30分~48時間 |
20~40% | カタラーゼが失活し、過酸化水素が生成し、 菌体内構造物が酸化変性し、死滅する。 細胞膜が傷つき菌体蛋白、RNAなどが漏出する |
10~30分 |
40~80% | 細胞膜、蛋白構造などが急速に変性、破壊する | 5分以内 |
80~99% | 細胞膜、蛋白構造などが急速に変性、 破壊が40~80%よりも少し遅くなる |
10~30分 |
出典:山下勝「アルコール類の微生物に対する作用」.防菌防備 24:195-219,1996.の内容を改変
表から読み取る 消毒液の使い分け
エタノールやアルコールの濃度(1列目)に着目すると消毒には40~80%が最適だということが分かりますが、右端の列「死滅時間」に気になる記載があります。
濃度40%~80%では死滅時間は5分以内。アルコールスプレーを噴霧すれば菌はすぐに死滅するイメージがありましたが、5分はかかることが表から分かります。
美容室の設備を消毒する際の注意点は?
これに加えて考慮したい点は、アルコールは揮発性が高いこと。短時間で気体化するため、セット面のような広範囲の場所には適さないのかもしれません。それを示すように2020年4月24日現在、東京都中野区の健康福祉部・保健予防課は手指の消毒はアルコール、物の表面の消毒は塩素系漂白剤(次亜塩素酸ナトリウム)を推奨しています。
ちなみにアルコールやエタノールで物を消毒する場合、一部の塗料(特に塗料の上にニスを塗っていない場合が多いらしい)は剥げ落ちてしまうことがあるそうなので、注意が必要です。
こちらのお話は、埼玉県川越市の『TOKUSA DESIGN』の吉見廣一さんより伺いました。
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