三密回避の間引き営業を逆手に取った経営施策

三密回避だから“貸し切り”という選択肢

どうも、CHIAKIです! 新型コロナウイルスの感染者数がまた微妙に増え始めていますね。

政府はまだ「第2波到来」というようなアナウンスをしていませんが、やはりまだまだ警戒は必要なようです。このコロナ禍は、確実にサロンワークを変えました。

たぶん、サロンワークを行う上で一番変化がわかりやすいのが、三密回避のためのセット面の間引き営業なのではと思います。多くのサロンでは、少なくとも1席は開けてけ営業するという処置をしているようですね。

今日のブログでご紹介したいのは、そんな間引き営業を、ある意味逆手に取った話です。間引き営業を逆手に取る施策を講じたのは、東京・八王子に1店舗を展開する『hair & nagomi ToMas(以下、ToMas)』の等松明良オーナーです。

『ToMas』では、このコロナ禍を機に、 “貸し切り営業”を導入しました。貸し切りの対象としたのは、ご家族やご夫婦で来店されるお客様です。確かに家族や夫婦ならいつも一緒に暮らしているわけですから、三密回避の心配はいらないですよね。ちなみにサロンは、今年の頭まで技術者3人でやっていましたが、晴れて1名が独立して、今は技術者2名(等松オーナーとスタッフの吉田瑞樹さん)で営業しているそうです。

貸し切り営業をしようと思ったワケ

等松オーナーは、貸し切りプランを取り入れようと思ったきっかけをこう話します。

「都内に外出自粛要請が出ていた頃、旦那さんとお子さん二人のお客様がお見えになりました。奥様が車で送りに来ていて、二人がカットしている間、『どこかで時間をつぶさなきゃ』とおっしゃいました。

その時期は、カフェとか普段ならちょっと時間をつぶすのにうってつけの場所は開いていなく、またデパートなども休業中でショッピングというわけにもいかない状態。『それならウチで待っていては』と提案したら、思いのほか喜んでいただけて。実際、カットをし始めると、みんな和気あいあいな感じだったんですよね。その姿を見ていたら、貸し切りもありかなと思いました」。

そうなんです、この貸し切りプランには、単なる三密回避とか、そういう物理的な問題だけじゃない、もっと別の価値があるんです。

3歳のお子さんがいる家族がサロンを貸し切り

とある週末のこの日、『ToMas』の貸し切りプランを利用されたのは、3歳のお子さんがいらっしゃるご家族でした。サロンでは、こんな感じでウェルカムボードを出してご家族を歓迎します。

この日は、パパ、ママ、お嬢ちゃんの3人が来店。パパとママは昔からのサロンの常連さんだったこともあり、等松オーナーの「家にいるときみたく、くつろいでくださいね」の一言で、それぞれが好きな椅子に腰かけて、ママは女性スタッフの吉田さんと談笑を始め、パパは雑誌をパラパラめくり、思い思いにリラックスした空間を満喫し始めます。

その二人の様子と対照的にテンション高く走り回るのがお嬢ちゃん。普段なら、「走っちゃダメ!」とか、「それ、触っちゃダメ!」などと両親から注意されるのが、このときばかりはOK!の空気を読んで、ここぞとばかりに目にするものを触りまくり、サロンの隅から隅までをくまなく探索。

等松オーナーは、小さなお子さんがいる貸し切りの場合の注意点をこんなふうに説明してくれました「ハサミなどの刃物類と、アイロンとかの高熱類は注意しています。特に刃物は使わないときもシザーケースに入れて常に技術者が携帯するようにしています」。

コロナ禍のママは来店ハードルが高い

ちなみにこのご家族の貸し切りは1時間半ちょっと。実際、ご家族が過ごしたサロンでの時間はゆったりと流れている感じでしたが、ある意味、あっという間に施術は終わっていたような印象もありました。お店側からすれば、約1時間半で、カット2名分と一人分のカラー、さらにキッズカット1名分の料金になるわけですから効率は悪くないはずです。「このコロナ禍では、フルに予約は取れないので、こうした貸し切りは結構活用できると思います」(等松さん)。

もちろん貸し切りプランは、サロンにとってのメリットだけではなく、お客様のメリットもたくさんあります。その証拠にこの日来店されたご家族の奥様は、後日、こんなコメントをサロンに送ってくれたそうです。

「3歳児を連れて美容室に行くことは、キッズスペースがあるなど、キッズ対応ができる美容室でないとまずあり得ません。ちなみに通常、親の私が一人で美容室に行くためには、まず娘を誰に預けるかとか、そういう算段から始めないといけないんです。両親とかと同居しているわけじゃないので、案外、これってハードルが高いわけです。等松さんのお店の貸し切りでは、それをしなくていいことがよいです。そしてなにより、娘が多少騒いでも周りの目をさほど気にしなくてもよい所がとても安心でした。親子3人で美容室ってほとんどなく、私も娘もよりリラックスできたし、滞在時間は短くても楽しめました。これからの美容室に望むことは、もっとたくさんの美容室がこのような貸し切り時間とか、キッズスペースをつくるなど、キッズ対応の美容室が増えたら嬉しいなと思います」。

かなり満足されたんでしょうね!

美容師は、一歩踏み込んだ仕事ができる

お客様からもかなり好評を得ている貸し切りプラン、「さすがっす!」などと思っていると、等松さんは、次のように付け加えてくれました。

「実は、先ほどのご家族からは、プラスでこんな要望もいただいたんです。『なんらかの事情で家から出られないお母さんお父さんにカットやメイクをしてくれるサービスがあったらな』という話でした。このご家族の次女の娘さんは、生まれてまだ1度も病院を出たことがないのだそうです。そのため、家庭は今後、自宅介護になるのだとか。パパやママは、我が子の命を守るために外出したくてもなかなか出られない毎日になりそうなんですね。だから、「呼んだら来てくれる美容室がほしい」と要望されました。

この話を受けて、今、そういうサービスもできないかと考えているんです。お客様は僕らを信頼してくれるから、ここまで込み入った話をしてくださる。本当、美容師の仕事ってそこまで人に深く人に入れるんです。他にこんな仕事ってなかなかないんじゃないかな。だからこそ、美容室や美容師の可能性をもっと広げられたらいいなと思います」。

素敵ですね。「経営とサイエンス」2020年8月号では、今回の『ToMas』の貸し切りプランについて運営のポイントをさらに細かくまとめています。どんなやり方をするから、『ToMas』の貸し切りプランは顧客の深い部分に刺さるのか。ご興味のある方は是非ともご覧いただけたら嬉しいです。